Tuesday, August 07, 2012

Principium individuationis

ボナツィ先生




突然申し訳ありません。



今、トマス・アクィナスの『存在者と本質について』に目を通しています。

どうしても、気になるところがあります。

お忙しいこととは存じますが、ご教授願いたくメールいたしました。



文中の訳語において「個体」と「固体」という漢字があてがわれていますが…

英語訳ではどれも同じ「individual」のようです。

これらの日本語を使い分けられていることの真意をお教えください。



よろしくお願いいたします。


H

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Hさん、



さすが、大変するどいところを突いておられますね。

まず、漢字辞典を調べますと(白川静、『常用字解』、平凡社)、こうあります。


「固は固定した一定の形のもの。個は相手のない片方だけのものをいい、『ひとつ、ひとり』の意味となる。ものを数えるときにそえる語の个 (こ)・箇と同じように、一個・二個のように用いる」

ですから、「この家」あるいは「現在の日本の総理大臣」というときに、そこに「個性原理」の二つの側面を指摘できます。近所にある数々の家の一つ、戦後の総理大臣の一人。と、固有の形をした家、一定の固有名詞を持っている総理大臣。

このように使い分けるつもりでした。ラテン語のINDIVIDUUMを、文脈によって、「固体」「個体」「個物」に訳したのは、日常言語に近い、一般の大学生でも分かるようにするためですが、成功したかどうかは別問題でしょう。

とりあえず、これでよろしいでしょうか。それとも、もっと深く掘り下げる必要を感じておられるのでしょうか。また、教えてください。


それでは、時節柄、お身体ご自愛下さい。


ボナツィ

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